暫定任意適用事業
労働者を雇用する事業はすべて(雇用保険の)適用事業となり、労働者が被保険者の要件を満たす場合、雇用保険関係の届け出が必要となりますが、一定の場合には任意適用とされ、労働者の雇用保険加入・雇用保険関係の届出が任意となります。
概要
20101
農林水産の事業のうち常時5人以上の労働者を雇用する事業以外の事業(国、都道府県、市町村等及び法人の事業を除く)は、当分の間、任意適用事業とされる。
この任意適用事業とされる事業を、「暫定任意適用事業」という。
暫定任意適用事業については、事業主が任意加入の申請をし、厚生労働大臣の認可があった日にその事業につき雇用保険に係る保険関係が成立する。
認可があった日より前の日に遡って保険関係が成立することはない。
意義
20102
暫定任意適用事業となる事業は、国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものが行う事業及び法人である事業主の事業を除き、次の①②のいずれにも該当するものである。
次に掲げる事業(いわゆる農林水産の事業)であること
・土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業(いわゆる農業、林業と称せられるすべての事業)
・動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他畜産、養蚕又は水産の事業
・なお、農業用水供給業及びもやし製造業は、日本標準産業分類では農業に含まれるが上記a又はbの事業には該当しないので、留意する
常時5人以上の労働者を雇用する事業以外の事業であること
暫定任意適用事業の保険関係の成立及び消滅については、徴収法附則の定めるところによるものであり、これらの規定により雇用保険に係る保険関係が成立している事業は、法第5 条第1項に規定する適用事業に含まれる。
「法人」の意義
20104
「法人」とは、私法人、公法人、特殊法人、公益法人、中間法人(協同組合等)、営利法人(会社)を問わず、法人格のある社団、財団のすべてが含まれる。
「常時5人以上」の意義
20105
「常5人以上」とは、一の事業において雇用する労働者の数が年間を通じて5人以上であることをいう。
したがって、ごく短期間のみ行われる事業、あるいは一定の季節にのみ行われる事業(いわゆる季節的事業)は、通常「常時5人以上」には該当しない。
また労働者の退職等により労働者の数が5人未満となった場合であっても、事業の性質上速やかに補充を要し、事業の規模等からみて5人未満の状態が一時的であると認められるときは、5人以上として取り扱う。
また、事業主が数事業を行っている場合においては、その個々の事業について5人以上であるか否かを判断する。
5人の計算に当たっては、法第6条第1号から第6号までに該当し法の適用を受けない労働者も含まれる。
したがって、法第42 条に規定する日雇労働者も含めて計算する。
ただし、法の適用を受けない労働者のみを雇用する事業主の事業についてはその数のいかんにかかわらず、適用事業として取り扱う必要はない。
事業主が適用事業に該当する部門と暫定任意適用事業に該当する部門とを兼営する場合の取扱い
20106
事業主が適用事業に該当する部門(以下、適用部門)と暫定任意適用事業に該当する部門(以下、非適用部門)とを兼営している場合は、次によって取り扱う。
それぞれの部門が独立した事業と認められる場合は、適用部門のみが適用事業となる。
一方が他方の一部門にすぎず、それぞれの部門が独立した事業と認められない場合であって、主たる業務が適用部門であるときは、当該事業主の行う事業全体が適用事業となる。
任意加入の認可等
認可の基準
20153
イ
任意加入の認可は、暫定任意適用事業の事業主に対して、当該任意適用事業の業務に従事する者の雇用関係が明確であるかどうか、事業主に労働保険関係法令上の義務の履行を期待できるかどうかを判断した上、当該事業に適用事業としての地位を与えようとするものであるから、これらの点について十分調査することが必要である。
ロ
暫定任意適用事業の事業主に対しては、次の(イ)~(ヘ)のいずれにも該当する場合に認可することとする。
また、認可に当たっては認可の期限を付しても差し支えない。(認可に期限を付した場合は、その事業は、期限の到来と同時に当然に適用事業ではなくなる)
(イ)
当該事業部門において、おおむね年間を通じて継続的に事業活動を行うものであること。
(ロ)
労働保険料の納付、諸届の提出、離職証明書の作成等の事務処理が確実に行われるものであること。なお、これらの事務処理を労働保険事務組合(以下、事務組合)に委託している場合にはこの要件を満たしているものとして取り扱う。
(ハ)
雇用関係の存否の判断、賃金の範囲の決定、被保険者期間の計算、就業状態の確認等が困難でないこと。
(ニ)
労働保険料の滞納のおそれがないこと。
(ホ)
事業場の閉鎖を目前に控えたもの、近く多数の離職者が発生することが予定されるもの等雇用保険制度を悪用しようとする逆選択のおそれのあるものでないこと。
(ヘ)
正当な理由なく他の社会保険に加入しないものでないこと。
ハ
上記の基準中、(ロ)における「事務処理能力」については、当該事業主が加入している同種の事業を行う者の団体(事務組合の認可を受けている団体を除く(以下、事業主団体)があり、その団体が当該事業主に代わって雇用保険に関する事務を処理するものである場合には、当該事業主団体を単位として判断しても差支えない。
認可の手続
20154
認可申請
暫定任意適用事業の事業主は、任意加入の申請をしようとするときは、任意加入申請書(徴収法施行規則様式第1号)を、その事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長に提出しなければならない。
ただし、事務組合に任意加入の申請事務を委託する事業主の事業にあっては、任意加入申請書の提出は、事務組合の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働局長又は事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長のいずれか一方に対して行う。
実務上は安定所へ提出し、安定所から労働局へ送付される。
労働者の同意
暫定任意適用事業の事業主は、その事業に使用される労働者の1/2以上の同意を得なければ任意加入の申請を行うことができず、また、その事業に使用される労働者の1/2以上の者が希望するときは、任意加入の申請を行わなければならない。
ここでいう「その事業に使用される労働者の1/2」とは、その事業において使用される労働者総数の1/2以上の者ではなく、その事業が任意加入の認可を受けて適用事業となっても被保険者とならない労働者を除いた労働者の1/2以上の者をいう。
この場合、被保険者となるべき者であるかどうかの判断は、任意加入申請書が提出された際に行う。
任意加入の認可を受けた事業の事業主は、保険関係成立届の提出の必要はないが、雇用保険適用事業所設置届(以下、事業所設置届)及びその事業に雇用される労働者について雇用保険被保険者資格取得届(以下、資格取得届)を事業所の所在地を管轄する安定所に提出しなければならない。
申請者等から徴する承諾書等
認可を行う場合には、あらかじめ事業主から、次の書面を提出させる。
・認可基準に抵触しないよう万全の努力をする旨の「承諾書」
・認可基準に抵触するに至ったときは、そのとき以降認可を撤回されること、失業等給付に関して偽りの届出、報告、証明を行い不正に失業等給付を受けさせようとしたときその他不正の行為があったときも同様であること及び認可の申請に際して事実を秘す等の不正の行為があった場合は、認可をさかのぼって取り消されることについて異議なき旨の「同意書」
・極力離職者の発生を抑制し、やむを得ず離職者が発生した場合にも、その者に対して安定所の紹介する職業紹介に積極的に応ずるよう十分指導する旨の「誓約書」
任意加入申請書の受理等
任意加入申請書を受理する場合には、申請書のほか、認可を行う場合に必要な書類を一括して提出するよう指導すること。
認可に当たっての留意事項
認可項目の調査
認可に当たっては、提出書類の審査のほか、適宜実地調査を行い、認可基準の各項目について慎重に判断する。
この場合、特に次に留意する。
・雇用関係の存否を判断するときは、雇用関係の当事者間の契約等をまず把握する
・賃金については、通貨によるもののほか、現物給与による場合もあると考えられるが、申請時に当該事業主から十分説明を求め、賃金の範囲、評価額等をあらかじめ明確に把握しておく
・当該事業部門がおおむね年間を通じて継続的に事業活動を行うものであるか否かの確認に当たっては、事業主から説明を求め、必要に応じて事業活動が継続して行われることがわかる書類を提出させた上で判断することとするが、各都道府県労働局において、各産業、各都道府県労働局の実情に応じた具体的な判断基準を作成し、この基準に照らして通年継続事業活動の有無を総合的に判断する。